Spurs Intuition

トッテナム・ホットスパーFCについて根拠はほぼなしで、印象論を書きなぐります。

いつもどこかにハリー・ケイン

ハリー・ケインのFCバイエルン・ミュンヘンへの移籍が決まった。

スパーズ側のツイートには予想通りちょっとした寂しさを感じた程度だったけれど、バイエルン側の発表動画には予想外にもかなり心をやられてしまった。タキシードなんて着るなよ。

 

どれだけ努力し、目に見える結果を出し続けてもタイトルを手に入れられない悔しさ、それ故の移籍願望、その全てをしっかりと理解しているつもりだった。だからケインがバイエルンに移籍するという噂にそれほど驚きはなかったし、仕方がないことだと思った。ケインは十分スパーズに貢献したんだと、そう納得していた。

けれど、いざバイエルンへの移籍が決まると何故かケインに裏切られたような気分になった。アイドルオタクが推しのフライデーに阿鼻叫喚するように、分かってはいた現実にとどめを刺された。

プレスが緩いとか、クロスにマイナスで待ちすぎとか、ボールを受けに来すぎとか、おんぶに抱っこだった割に最近はケインへの文句が増えていた。それはつまり完全にケインの存在が当たり前になっていたということであり、今になってそれを痛感している。

 

僕がスパーズを見始めたのはたしか17-18だった。祖母の家で契約していたeo光のケーブルテレビセットの中にJ SPORTSが入っていた。スパーズの試合が放送されることはほとんどなかったけれど、ソニージョルジーニョをぶち抜いたチェルシー戦を見たことは記憶に深く刻まれている。

その頃からずっとハリー・ケインはピッチの前方中央にずっといて(そこからどんどん色んなところに顔を出すようになり)、聖域なんていう言われ方を日本のスパーズサポにされたりもしたが、ずっとスパーズを牽引し続けてくれた。

20-21は特にケインの凄さを感じた。得点だけではなくアシストの能力まで発揮し、サウサンプトン戦で4アシストしたときには今シーズンのハリケンさんはデブライネになるんやなと思ったほどだった。結局、デブライネどころの話ではなく、チームがボロボロの状況で得点王とアシスト王になってしまったのだけれど。

ケインは思い出せないほど多くのゴールを決め、思い出せないほど多くのFKを無駄にしてくれた。

ちなみにケインのゴールで一番ビビったのは20-21のホームでクリスタル・パレスと対戦したゲームでのとてつもなくカーブをかけたゴールだ。本当に今までたくさんのゴールをありがとうございました。

 

この一件で自分は最近あまりにもサッカーを戦術的、商業的に見ていた(少なくとも見ようとしていた)んだなと気づいた。これまで僕はケインを駒として、資産として見ていた。でも実際ハリー・ケインは文化と物語を背負ったかなりエモい存在であり、駒にも資産にもならない本当に素敵な一人の男だ。ケインはただの世界最高峰ストライカーではなく、ユースからスパーズ一筋のワンクラブマンであり、たまたまその男がシュートもパスもポストプレーもセットプレー守備時の弾き返しも規格外に上手いだけだったんだ。

 

スパーズを離れたとしてもケインはヨーロッパサッカーの舞台で名を轟かせる。いつもホワイト・ハート・レーントッテナム・ホットスパースタジアムのどこかで技術とフィジカルとメンタルを発揮していたケインが、これからはアリアンツ・アレナハンブルクのどこかやドルトムントのあちこちで信じられないほどヤケクソみたいなサイドチェンジや鳥肌が立つポストプレーやニア上ズドンをやってのける。

たとえ別の場所に行こうが、やっぱりいつもどこかにハリー・ケインはいるのだ。